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第6章:時刻の元帳

埃と熱く酸化した金属の匂いが、時刻の天文台に満ちていた。渾天儀の真ちゅうの骨組みが、大理石の敷石の上に崩れ落ちて横たわっている。大きな天球儀は高いアーチ天井からぶら下がったまま動かず、かつて金めっきだった惑星は黒く変色していた。壊れた時間の静かな森の中心に〈記録官〉が立っていた。外套の羊毛が、強張った肩にざらりと擦れる。彼女の視線は床の罠扉――ぽっかり開いた口――に釘づけだった。その下には、絡み合う水晶の歯車が眠ったまま、うねりを見せている。 「天体機構か」沈黙を断ち切ったのは〈請求者〉の声だった。彼は彼女の傍らに立ち、汚れのこびりついた窓を背にした影絵のように見えた。手袋をした手には繊細な品――砂時計――がある。球は透明な水晶を一つの塊から彫り出したもので、銀の透かし細工に縁取られていた。中の砂は淡い、囚われた光を放っている。「小さな部品にすぎない。星の崇拝教団の礼拝時刻を測っていた。替えの利かないものだ」 彼は砂時計を罠扉の縁に置いた。指先で一度、意図的に押す。それだけで砂時計は傾き、虚空へと転げ落ちた。 エララの息が喉で止まった。筋肉が弾けるように張り、飛び込む準備をする。 「待て」命令は刃だった。彼は彼女を見ない。視線は、下で凍りついた歯車のぎざぎざの歯へと落ちていく砂時計を追っている。「届かない。おまえの持つ時間ではな。借りねばならない」 砂時計はくるくると、端から端へと回転しながら落ち、弱い光の欠片を拾っては弾いた。十五フィートの空白。それから金属の顎へ向けて、三フィートの落下。彼女の胃も一緒に落ちる。軌道と速度を計算する――冷たく、馴染み深い喪失の計算だ。 「五秒」口調は臨床的で、外科医が手技を実況するようだった。「それ以上はない。場を感じるはずだ。この天文台に残る時術が個人の時間を歪める。抵抗してくる。おまえの仕事は盗むことではない。願い出ることだ。そして支払うことだ」 借りた時間の冷たい鉄の味が、舌の上を幽霊のようにかすめた。彼女は一度だけ頷く。顎が痛む。砂時計は回転する。落下の半ば。 彼女は未来に手を伸ばした。 それは扉ではなかった。冷たい蜜の壁だった。濃く、粘り、抵抗する壁。天文台の時間の場が彼女を掴み、粘性のある、意思を持った圧力となってのしかかる。前方の空白から引き抜いた五秒は、奔流としてではなく、ゆっくりと、痛みを伴う採取としてやってきた。関節が悲鳴を上げる――まだ得てもいない老いの、骨の奥まで染みる痛み。鉄の味は、古い硬貨をひと口分、口いっぱいに含んだように変わる。室内の光は引き伸ばされ、埃の粒が凍った星のように宙に吊り下がった。 彼女は動いた。 一歩ごとが戦いだった。空気が深い水のように彼女へ圧し掛かる。砂時計は不可能なほど、気だるい遅さで落ちていくのに、彼女自身の身体も同じくらい鉛のように重かった。借りた二秒を、大理石の床を横切るだけで使い切る。砂粒が薄い靴底を噛んだ。三秒。彼女は落とし戸の縁にいた。水晶の計時器は、主ぜんまいのコイルがのぞかせる、きらめく真鍮の牙から手のひら一つ分のところにある。四。彼女の手が走った。つかむのではない。受け止めるのだ。落下の勢いが静まるよう、下に空気をすくうように手を添え、繊細な枠がそのまま掌に収まるのを待つ。指が閉じた。 水晶はぎょっとするほど冷たかった。 五。 借りた時間が、ぱきりと戻った。 世界が押し寄せた。音が戻る――建物が落ち着く遠いきしみ、自分自身の荒い息。ねばつく圧力が消え、胸の内に突然、空洞めいた軽さが広がる。彼女は縁からよろめいて退き、救い上げた計時器を腹に抱き締めた。吐き気の波が、熱く酸っぱく、喉元までせり上がる。血の味がした。唇を噛んでいたのだ。 「よろしい」 The Claimant が彼女のそばにいた。肘に置かれた手は強く、私情のないものだった。「受け止め方は正しい。原理を理解したな。盗むのではない、負うのだ」 エララはただうなずくことしかできず、歯の間から空気を吸い込んだ。痛みはもう生き物のようになって、膝や背骨へと居座りはじめている――先ほどまでの必死の借り入れより、もっと鋭く、もっと焦点の定まった痛み。これは正式な取引だ。利息は即座に来る。彼女は落とし戸から目をそらし、視界が揺れるまま向きを変えた。いちばん近い確かなものは、観測室の中心的存在――大いなるクロノメーターだった。 真鍮とガラスの巨大な柱が二十フィートそびえ、その文字盤は噛み合う複数のダイヤルが織りなす複雑な曼荼羅になっている。表面は暗く磨かれた鏡のようだった。 彼女はそこに映る自分を捉え、凍りついた。 こめかみのあたり、濃い茶の髪に織り込まれるように、純粋な金属の銀の筋が走っていた。数分前にはなかったものだ。鈍い光の中でぎらりと光り、冷酷な受領証のように突きつけてくる。負債は抽象ではない。彼女の身体に刻み込まれていくのだ。肌が二回りほどきつく感じた。 低い唸りが、ブーツの底から足裏へと震え上がってきた。 クロノメーターからだ。 ガラスの文字盤の奥にある巨大な真鍮の歯車が、何世紀も眠っていたはずなのに、回り始めた。ゆっくりと威厳ある進みではない。焦り狂うように加速する回転。金属が金属に悲鳴を上げながら耐える音が、せり上がる金切り声となって響く。ガラスの文字盤が枠の中で震えた。 「下がれ」The Claimant の声から、臨床的な落ち着きが消えた。 エララは下がろうとした。だが脚は鉛で、根が生えたように動かない。クロノメーターの中央の振り子――磨かれた黒鉄の球が、目もくらむ弧を描いて左右に鞭のように振れ始めた。唸りは耳をつんざく叫びへ変わる。オゾンの匂いが、鋭く電気めいて、埃の中を切り裂いた。空気がぱちぱちと爆ぜる。 彼の手が彼女の肩をつかみ、引きずるように後ろへ引いた――ちょうどその瞬間、ガラスの文字盤が爆ぜ散った。 それは、ただ割れただけではなかった。音のない噴出、そのあとに――まるで彼女の頭蓋の内側から湧き上がるかのような轟音。厚く面取りされたガラスの欠片が、千枚にもなって広間へ扇状に広がり、凍った雨のようにきらめいた。その背後から衝撃波が来た――目に見える歪み、現実そのものの波紋が走り、光さえ曲げてねじ曲げた。彼は彼女を、占星術の記号が彫り込まれた幅広い大理石の柱の陰へ突き飛ばした。彼女は冷たい石に背中からぶつかり、息が喉から叩き出された。彼はその脇に身を押しつけ、自分の体で盾になった。 破片が、彼らの脇を飛び去った。 そして、もう一度、飛び去った。 エララは瞬きをした。混乱していた。同じきらめくガラス片の滝が、同じ空間を二度目に切り裂いたのだ。軌道が重なり合っている。ありえない。二秒のループ。割れる音が逆再生される――奇妙な、吸い込むような「シンク・ウーシュ」――それからまた正しく進んで、耳をつんざく粉砕音になる。空洞のような冷たさが続き、血の温もりをじわじわと奪っていった。 「フィードバックだ!」と、歯車の死にかけた叫びと、繰り返される破砕音の上から、The Claimantが叫んだ。「おまえの残留エネルギーが――計測装置と共鳴した!」 時間の波紋が彼らを洗った。一拍のあいだ、エララには二重に見えた。The Claimantが二人。片方が話し、もう片方は半秒遅れで、口の動きがずれている。柱は頼りなく感じられ、石の幽霊のようだった。だが次の瞬間、硬さが戻った。 静寂が落ちてきた。騒音よりも重く。 用心深く、The Claimantは柱の陰からのぞき込んだ。エララも続く。手足が震えていた。中央広間は、変わり果てていた。 大クロノメーターは、腑を抜かれた屍だった。真鍮の内臓――巨大な歯車と脱進機のレバー――が大理石の床へとこぼれ落ちている。ガラスの粉が至るところで光っていた。ほかの小さな時計類も無事ではない。文字盤はひび割れ、振り子は止まって横たわっていた。その瓦礫の中で、ひとつだけ無傷のものがあった。床にまっすぐ立つ水晶の砂時計。淡い砂が、片方の球からもう片方へ、穏やかに流れ続けている。死体の中で動く、小さな心臓。 The Claimantは長く、抑えた息を吐いた。彼は外へ出た。ブーツがガラスを踏み砕き、じゃりっと鳴る。破壊の光景には目を向けない。視線はエララへ――彼女の髪に走る銀の筋へ――それからまた砂時計へ戻った。 「本物を、ひとつ救ったな」彼は言った。声は静かで、さっきまでの刺を削ぎ落としていた。「それは……意味がある」 それは思いがけない、わずかな優しさだった。彼女はそれにしがみついた。 彼は、倒れた天球儀の腕に寄りかかるように置かれた革の鞄へ向かった。留め具を外し、硬い羊皮紙で作られた大きなフォリオを引き出すと、それを抱えて戻ってきた。彼は彼女に手渡さない。開き、瓦礫の合間の、まだ床が見えている場所へ平らに置いた。 「時の王冠。」 エララは膝をついた。砂礫がローブ越しに膝へ食い込む。頁には、正確だが色褪せたインクで描かれた、記録庫のスケッチが載っていた。輪飾り――だが彼女が思い描いていたものではない。単なる帯ではなかった。これは、恐るべき複雑さを持つ機関だった。外輪には、微細な対数目盛が刻まれている。宝石が据えられるはずの箇所には、針金と結晶の精緻な格子がはめ込まれ、時間理論の注記が添えられていた――「共鳴減衰器」「量子フラックス計」「エントロピー負債記録器」。 それは王冠ではなかった。校正された器具だった。 震える指が、精密な断面図の上で宙に止まった。内側の面は額に載せるためのものではない。髪の毛ほどに細い針が、千本も並んでいた。 「受容体……」彼女は囁いた。その言葉は埃の味がした。 「時間の徴税人だ。」The Claimantが訂正した。声は平坦だった。彼は彼女の傍らに膝をつき、革とオゾンの匂いをまとっている。「万神殿は時間の前借りを禁じはしなかった、エララ。できなかったのだ。それは呼吸と同じく、人の持つ機能だからな。あいつらは禁じる代わりに、許認可した。この装置は前借りを測り、負債を査定し、十分の一を取り立てた。」彼は針の配列の横にある注記を指で叩いた。「ここが、借りた時間の一部を神々の貯蔵へ直接吸い上げる。取引手数料だ。自分の未来を使うという特権のためのな。」 恐怖は、ゆっくりと冷たい滲みとなって、肉体の痛みが残した空洞を満たしていった。彼女は膝元に転がるクロノメーターのガラス片に映った自分の反射――銀の筋――を見つめた。彼女だけの、危険な能力。それは武器ではない。歳入の流れだった。彼女は歩く台帳の一項目にすぎなかった。 「それは、The Claimantの統治を正当化するために必要だって言ったわよね」彼女は掠れた声で言った。 「必要だ。だが、象徴としてではない。」彼はフォリオを柔らかな鈍い音を立てて閉じた。「王冠を支配する者は、あらゆる前借り時間の測定を支配する。課税できる。禁じることもできる。理論上は、未払いの負債を取り立てることさえできる。そこに付与される正当性は、経済のものだ。鋳造所の力。徴税人の力だ。」 彼が授けた訓練に彼女が置いてきた信頼は、どろりと凝って、硬い疑念へと変わった。彼は彼女の顔に走った変化を見た。目を逸らさない。 「なぜ私がおまえを探したのか、ずっと不思議に思っていたな。腕前だけではない。おまえの存在――登録も測定もされていない存在――は、あいつらの古い仕組みの欠陥だ。台帳の影だ。おまえは、あいつらの会計の外にある時間を体現している。それは脅威になる。だが同時に……別の可能性にもなる。」 身震いが彼女を打った。突然で激しい――時間的な衝撃、ずれた移動の冷たさが石から染み上がってくる。彼女は自分の腕を抱きしめたが、粗い羊毛は少しも温めてくれない。 The Claimantは彼女を見ていた。それから、静かで実務的な動きで、自分の肩から濃い羊毛の外套を外し、差し出した。儀式めいたもののない、ただの所作。彼女は受け取った。羊毛にはまだ彼の体温が残っている。彼女はそれを身に巻きつけ、その重みが確かな慰めになった。 「訓練は、ただ制御のためだけではない」彼は立ち上がりながら言った。壊れたクロノメーターに目をやり、その表情は読み取れない。「較正のためだ。おまえの力を――判読できる形にする。俺に。おまえが、それを解剖するために作られた装置の前に立つ前に、俺たちが何を扱っているのかを理解できるようにするために」 エララは床に座ったまま、外套の重みを受けとめ、王冠のスケッチが頭の中で燃えていた。彼女は成功した。命令どおりに、しかも精密に、時間を借りたのだ。だがその代償として、彼女は自分を商品として見る制度に姿をさらした。納税者。資源。 水晶の砂時計が一巡を終えた。柔らかな *カチッ* という音とともに、それはひとりでに反転し、再び動き出す。淡い砂があらためて流れ落ちる。時間そのものがたったいま壊された部屋で、完璧に孤立した計測が続いていく。 汚れた窓の外では、灰色の光がいっそう濃くなり、たそがれへ沈んでいった。The Claimantは観測所の大扉へ向かい、薄れゆく昼を背にして、そのシルエットは黒く浮かび上がる。 「ここまでだ。荷物を集めろ。観測所の破壊は見過ごされない。ほかの連中も破れ目を感じ取ったはずだ」 エララは体を押し上げた。身体が抗議する。あらゆる痛みが、すでに使い果たした未来への前払いだった。彼のほうへ歩くと、足取りの下で、自分の力の証拠がざりざりと音を立てた。砂時計のそばを通りかかったとき、彼女は立ち止まる。それを手に取った。水晶はなめらかで、冷たく、確かに実在していた。彼女はそれを、彼から渡された外套のポケットへ滑り込ませた。小さな勝利。守り抜いたひとつのもの。 彼女は扉のところで彼に並んだ。彼はちらりと彼女を見て、視線が髪に混じる銀にしばし留まり、それから外套のポケットのわずかな膨らみへ移った。何も言わない。彼は重い扉を押し開けた。 冷たい夕の空気が流れ込んできて、遠い雨と石の匂い――オゾンと埃のあとには清潔な香り――を運んだ。眼下には尖塔と文書庫の街が広がり、窓々がランプの灯でゆっくりと輝き始めている。忘れられた税の生ける道具が、いましがたこの街の只中で較正されたことなど知らぬ世界。 The Claimantは、川の近く、はるか東にある灯りの群れを指さした。「黄金街区。人間の銀行家一族だ。奴らの文書庫は、場合によっては神の保管所より古い。元の税法の断片――時間交換の利率――を持っているかもしれない」 彼は彼女を見た。目には、最後の灰色の光が映っている。「次の仕事は肉体労働じゃない。文書だ。神々が、借りた一分にどれほどの対価が妥当だと考えていたか調べろ」冷たく、笑いの欠片もない影のような笑みが唇に触れた。「俺の投資が、どれほどの価値なのか知る必要がある」 彼はたそがれの中へ踏み出し、彼女がついてくるのを当然のように待った。 エララは敷居に立ったまま、片手をポケットに入れ、砂時計が静かに、確かに回り続けるのを感じていた。もう一方の手が、ほとんど無意識にこめかみへ上がり、新しく混じった銀に触れる。ざらついていて、異物のようだった。

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