
黄泉の図書館
著者 もりともななせ
惹きこまれる理由: 死者の記憶が、量子データとして静かに積み上がる「黄泉の図書館」。 青年司書・春日透真は、そこに収められた亡き双子の兄・悠真の記憶データに、不自然な「書き換え」が生じていることに気づく。背後に浮かび上がるのは、死者同士の“最適な再縁結び”を掲げる秘密結社《連理会》と、記憶を商品として扱う巨大企業。さらに、死者と生者の再配置をめぐり中立を守ろうとする図書館組織内部でも、静かな対立が始まっていた。 「兄として再起動すれば、世界は安定する。ただし、お前は勘定に入らない」…
1961
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あらすじ
死者の記憶が、量子データとして静かに積み上がる「黄泉の図書館」。 青年司書・春日透真は、そこに収められた亡き双子の兄・悠真の記憶データに、不自然な「書き換え」が生じていることに気づく。背後に浮かび上がるのは、死者同士の“最適な再縁結び”を掲げる秘密結社《連理会》と、記憶を商品として扱う巨大企業。さらに、死者と生者の再配置をめぐり中立を守ろうとする図書館組織内部でも、静かな対立が始まっていた。 「兄として再起動すれば、世界は安定する。ただし、お前は勘定に入らない」 外見も声もほとんど同じ双子だからこそ可能な《双子スイッチ》計画。兄の死の真相を追いながら、透真は“兄になりかわる誘惑”と“自分として立つ決意”のあいだで揺れる。同時に、死に方を予約しようとする来館者・紗月との出会いが、「死後の縁」だけでなく「今どう生きるか」という問いを突きつけてくる。 「死者の記憶」は誰のものか。遺族か、国家か、それともシステムか──。 縁と追悼、タテマエとホンネが交錯する量子黄泉譚(よみたん)、開館。
完結 · 21 章公開中
ハマるかもしれない理由
強い導入、はっきりした感情の約束、そして「もう一章」が危険になる章数。
読者の熱
1961 読者の熱
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冒頭を少し
床の下から、湯気みたいな光が立ちのぼっていた。 桜色の、淡い蒸気だ。 ぽうっと屈折しながら、石でも木でもない床をじんわり温めている。 静かな「ちょろ、ちょろ」という水音が、どこからともなく響き、耳の奥で薄く揺れた。 出汁を弱火でとっている鍋が、見えないところでコトコトいっているみたいだ、と透真は思う。 春日透真は、まだ誰もいない閲覧室の真ん中に立っていた。 黄泉の図書館。 現世と重なり合った量子層の、外縁。 早番シフトの日の朝は、いつも少し肌寒い。 冷えた紙と、ごく薄く焚かれた線香の匂いが混ざり合い、喉の奥に細い膜を張る。 その上を、桜の花びらを練り込んだ飴みたいな甘い気配が、ゆっくりと溶けていく。 鼻の奥がきゅっと締まり、唾を飲み込むたび、その膜がかすかに擦れた。 透真は、小さく息を吐く。 「… … そこで、ズレてるな」 左の書架の列が、また半冊ぶん、手前ににじんでいた。 見た目の差は指先一つ分。…第1章を試す
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もりともななせ
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